変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『ナルニア国物語』ユースチス少年と愚劣王ラバダシ

どうも、ちょっと風邪で死んでいたので短いスパンで更新を入れます。
今回は『ナルニア国物語』です。
児童文学とはいいますが、イギリスらしいシニカルさと温かみに満ちた作品です。
全7巻からなるファンタジー小説ですが、中にはTF的な表現が含まれます。
以下にそのお話を紹介します。

 

物語の構成についてはざっくりと。あらすじについてもざっと軽く触れます。
ナルニア国物語』とは実際にはキリスト教の世界観をベースに構築されているらしいです。が、それを知らない、あるいは度外視しても楽しめると思うので、まずは『ライオンと魔女』を読むとナルニアの世界観がわかると思うのでオススメします。
ひとまず私の所持している箱入りセットのamazonをば。

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ナルニア国物語』は7巻の物語を通してナルニアという国の生い立ちから終焉までを描いています。ですが1巻から順番ではわかりにくく、wikiに掲載されている順に読むことで歴史を追う形になります。が、それはそれとして『ライオンと魔女』が一番主人公たちとナルニアの関わりについてわかりやすく描かれていると思います。これは『ライオンと魔女』が最初期の作品であることが理由なので、まずは、というわけです。
ナルニアはライオンのアスラン(キリストのメタファー存在)がある子供達の助力の元、文明(というか知恵?)のある世界を作り上げたことで出来上がりました。ナルニア国という世界は中世ヨーロッパをベースにしたファンタジーのような世界です。初期に建国されたころからものをいう動物(大型であるほど小さく、小型であるほど大きくなることで相互のバランスが取れているらしい)やよその滅びた世界から紛れ込んでしまった魔女を含めて、人間も御者とその妻が王として招かれて仕上がります。そこから順に世代が進み、ナルニアに常の冬を招いた魔女を外の世界から来た子供達が倒したり、世界の果てを探したり(地球と違い平面の世界らしく、リーピ・チープは果ての世界から帰らなかった/解釈は色々ありますけども)、あるいはよその国と争ったりという年代記の最後に、最後の審判のような一つの大きなイベントの後、ナルニアという国はなくなってしまいます。

 

というようなファンタジーの世界なので割と何かが何かに変身するような描写はちょくちょくありますが、その中でも印象的なのが、アダムとイブの子供達である『ライオンと魔女』の主人公の兄弟姉妹のいとこ、ユースチス少年のドラゴン化と、カロールメンの王子ラバダシのロバ化でしょう。

 

『朝びらき丸 東の海へ』はナルニアを征服したテルマール人という人々の10代目の王であり、『カスピアン王子の角笛』で簒奪された王位を取り返した王です。この王様が東の海へ旅立った七人の友人を探しに行く道中に、ルーシー、エドマンドと共にくっついてきたのがユースチスです。
ユースチスは初期はお世辞にもよい性格とは言えず、ある島で空腹から勝手に一人で抜け出し、死にかけていた(死んでいたかも?)ドラゴンを食べてしまった上、そこに残されていた大量のお宝に目を奪われます。自分にピッタリと思われる腕輪をつけて雨宿りがてら洞穴で眠ってしまったユースチスは、目がさめるとドラゴンになっていたのでした。
ということでその一文が掲載されているブログがあったのでご紹介です。
読んで。孤独に気付いて愕然とするユースチス、大変おいしいです。

ameblo.jp

いじわるをするとか話をするとかっていう次元じゃなくて、もはや人間というカテゴリーですらないっていうことに絶望して、初めて自分の行いを反省するとかグッネス。もっと早く反省しろというのは現実ベースの話です。ここではむしろそのザマァ的な感じを楽しみつつ、その絶望を一緒に感じることが大事なんだと思うんですよね。
ユースチスはその後カスピアン達に合流しようとしますが、会話することもできず、文字でのやりとりを試みますが、腕輪が締め付ける痛みでまともに書ききれません。
例えば「コノウテノワヲ トテクレ」といった具合です。
最後はもちろん元には戻れますが、そこまでのユースチスが巨大でカッコイイタイプのドラゴンなのにめっちゃダメ感あっていい感じなのでそこはオススメしたいです。

 

『馬と少年』のラバダシは正直私のナルニアイチオシシーンです。
というのも、変化途中の挿絵が入ってるんですよ。シーケンスイラスト。両腕が前に落ちていきながら鼻が膨らんでいくその様が。
挿絵掲載しているページがあったのでこちらへどうぞ。
ロバ化描いてるなんてソソりすぎでしょう。

z-majority.cocolog-nifty.com


詳細はちょっともう思い出せなくなっているんですが、横暴な方法で結婚を迫った王子が次代王様だというのに反省の色もなく、アスランにさえも無礼な態度を働き続けた挙句、誰もがもう手の施しようがない、と思ったところで、アスランから一度反省しなさいとばかりに姿を変えられます。
この時のセリフ、馬ではなくロバと気づき、
「う、馬ならいいんだが…馬なら…いいんだ…ウ…いー…ウイーン!ウイーン!」
っていう変化をするんですね。ロバの鳴き声は聞きようによってはウイーンと聞こえますし、そういうことだと思います。

 

ファンタジーの世界というのは時にこうした形で、罰するためのTFというものが往々にして行われます。
この『ナルニア国物語』には状態変化も含まれ、氷漬けがあったり、キャラクターの石化のような事象も起こります。
児童文学とあなどるなかれ。映画化の方も全部やってくれるといいですね。