変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『美女と野獣』恐らく世界で最も元に戻るなと言われた王子

何しろディズニーのスタッフが『元に戻しても人気でないのはわかってたんですよね』って言っちゃうから仕方ない。
どうも、今回はディズニーでも実写化された『美女と野獣』のお話をしたいと思います。
言わずと知れた異類婚姻譚であり、王子が元々人間であるというストーリーです。
多くの人はディズニーアニメ映画で見て、「元に戻っちゃった…」と思ったのでは。
やはりそこまで活躍してきた野獣と、かの王子の姿に連続性が保てないというか、
どうしても惚れ込んできた姿と乖離しているので可愛いと思えないというか。
その辺の意識が我々TFクラスタ以外にも発生しているのでしょう。
でなければ『ちょー美女と野獣』なんてラノベは存在しないはずなんですよ。こちらは元に戻った王子様を再び魔女に野獣にしてもらうというなかなかブッとんだケモナーのお姫様のお話です。それほどTF要素がないので紹介はしませんが、面白くはあるのでよろしければ。

ということで今回はいつもと趣向を変えて、『美女と野獣』のそれぞれのバージョンについてのTFについての違いを見ていきたいと思います。原作版はヴィルヌーヴのみに触れる形です。

原作『美女と野獣』のこと

いわゆるヴィルヌーヴ版です。原作がフランスの異類婚姻譚と呼ばれるものであることは有名だと思います。
ただ元々は魔法でもなんでもなく、どうやら王子は本人の悪事に神罰が下った形で野獣になっていたようです。ちょっとおぼろげ。大学の図書館で読んだのですけども。
ボーモン版というボーモン夫人が短縮した方で初めて魔女が登場している形ですね。
これにシーケンスらしい表現は見当たりませんが、なるほどこれは美女と野獣の物語でした。
青空文庫にて全文を読むことができます。

ヴィルヌーヴ夫人 Madame de Villeneuve 楠山正雄訳 ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣)


絵本『美女と野獣』のこと

日本で販売されているディズニー以外の絵本はヴィルヌーヴ版が基準です。
キャラクターデザイン的にはディズニーを継承しているものが多いですが、
少し違う、と感じる方は多いかもしれません。
概ね魔法の力で1P以内に元に戻るシーンがあるのでシーケンスはないですね。
私が所持していたのはこちら。

www.poplar.co.jp

最近話題の河出出版さんの。これもいずれ読んでみたいですね。

www.kawade.co.jpプリキュアのキャラデザインの人が作画とかどう考えても幼女の味方。
野獣が美獣っぽいしウルフルン? あ、そう思ったらすごく欲しいですねコレ。


ディズニー版『美女と野獣

もっとも知られているであろう『美女と野獣』です。
ディズニーアニメのなかでも当時のCGを使いまくった1作であり、その立体感には映画館で度肝抜かれました。
また細かく書き込まれた装飾やキャラクターを楽しめる一作でもあります。
野獣の様相がライオンやマントヒヒ、水牛などをうまく混ぜた感じであり、今後このキャラクターは二度現れないだろうと思わせる個性的な見た目をしています。
終わり側の人間に戻るシーンのシーケンスは非常に丁寧で、知る限り3人以上の同志が逆再生して楽しんだと言っていたので、それくらいインパクトのある丁寧な書き込みであるといえるでしょう。
画質はよくありませんがこちらですね。

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2014年実写版『美女と野獣

実写作品になります。
2014年ギャガ版はヴァンサン・カッセル扮する野獣とレア・セドゥのベルによる原作版に近いストーリーです。実は見てないです(笑)いや、レンタルはして見ていたんですけども、どうも記憶がない…多少退屈なのかもしれません。
あらすじとしては…ベルは三人の兄と二人の姉と父と生活している商人の娘です。しかし父親が船が沈没して資産を失い、田舎に引っ込むことになります。ある日船が引き上げられたと聞いた父親が長男とそこに向かいますが、船は借金のカタとして抑えられてしまいます。さらには長男が姿を消し、いつも飲んでいた酒場で借金をした上踏み倒していたことで追っ手に終われ、命からがら古城に逃げ込みます。そこで贈り物として持ち帰るはずだったものが全て用意され、暖かな食事をとった後、父親はそれらをいただいて帰ろうとします。しかしベルのねだったバラがないことに気づき、生垣から一本手折ると、途端に野獣が踊り出し、一晩の猶予を与えて囚われの身となるよう要求します。ベルは責任を感じて自分がその城へ向かいます。
ヴァンサン・カッセルの野獣はほとんどライオンのような感じです。TFシーンも匂わせ程度だった気がします。ここはまた見たら書き直しましょう。
注目すべきはストーリーでした。
今まで各ストーリーで王子が野獣になった理由というのは、一宿の優しささえも与えない傲慢さということになっていましたが、この話では違います。愛する者がいるのと同時に、狩りの名手であることを誇る者だったようです。それゆえに、黄金の鹿が王女の本来の姿であることを知らないまま、彼女を射殺してしまい、その父親である精霊の王に呪われたようです。王女様もTFしてたわすごいなフランス版。

該当シーンを見つけられなかったのでもしかしたら…シーケンスはなかったのかもしれませんね。うーん、もう一度見ないと。


2017年実写版『美女と野獣

上記の2014年の後に出たディズニー版です。
大筋は通常のアニメと差はありませんが、各種いい感じのTFによる制限設定がなされています。
ダン・スティーヴンスの野獣はフルCGとのことでやや残念ですが、アニメの野獣をリアリティのある三次元に落とし込んでいるな、と思えるいいデザインです。
また各種調度品に姿を変えられた人々も、アニメよりも柔軟性がなかったり、活動制限があったりします。薔薇が散るごとに活動時間が短くなる=眠っている時間が長くなるようです。物語の終盤、彼らは眠るようにしてただの調度品になってしまいます。つまり薔薇が散り終えてしまった後、野獣は本当の孤独に追いやられることになっていました。
TFのシーケンスシーンは後半の人に戻るシーンのみですが、これもまたアニメと同じく逆再生したくなる感じでした。最高。
てことでそのシーン。

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あと物品化好きな人には結構楽しめるかもしれません。調度品たちにももっと濃いめのストーリーが用意されています。
また今作はベルの母親が不在の理由も明かされるため、アニメよりすっきりと全体が見られるかもしれません。
賛否両論ではありますが、貴族の中にいわゆる有色人種がいたり、ヴィランであるガストンのサイドキック、ル・フゥがゲイという設定をなされていたりと野心的な構造になっています。


ディズニーリゾートにおける『美女と野獣
番外編のようなものです。
TFなどはしませんし、割と大きめのきぐるみなのですが、ベルとのダンスなど機敏に動きます。造形が非常に良いので一見の価値アリでしょう。

 

ということで長々紹介してきましたが、基本的に『美女と野獣』というストーリーは異類婚姻譚であると同時に、悪事の後の反省は正しくなされれば許される、というお話でもあると思います。
基本的に民話、童話における変身は人→獣の場合、何かの罰か呪いであることがほとんどであり、TFに到るまでの話をすることが多いと感じています。その後元に戻れるか、という部分が主体の話はほとんどないので、そういう意味でも王子が呪われた理由がやや不鮮明なのも頷けます。
全体的にディズニーがアレンジしたものが面白いなぁ、という感じなので、多くの方はご覧になっていると思うのですが、改めて見直すのも一興です。
ということで、『美女と野獣』でした。