変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

マイケル・ジャクソン『スリラー』のMV

どうも、今回も説明不要ですね。
マイケル・ジャクソン『スリラー』のMVです。
まずはもう見てください。ノーカットだと結構長いんですけど。

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メイキングも公開されています。見所は14分あたりからですが、ゾンビメイクもめっちゃ面白いから最初から見てほしいなぁ。

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ご存知の方も多いと思いますが、マイケル・ジャクソンの『スリラー』という曲のMVです。こちらは劇中劇とその後の話という二段構えの変身の構成です。
最初はオーラ・レイ演じるマイケルの恋人とマイケルが狼男映画を見ている(が、登場人物は同じくオーラとマイケルなので劇中劇の中で恐らく恋人の男女を示しているのだろうなぁと思ったりしています)シーン、こちらでマイケル・ジャクソン人狼化シーケンスが見られます。そして映画の内容とマイケルが面白がっていたことに不満たっぷりのオーラが帰り道にゾンビに遭遇、しかし助けを求めたはずのマイケルもゾンビ化していた…という楽しいホラービデオ。
オーラの怖がり方がまたキュートなんですよね…ビバヒル2にも出てた気がする。おぼろげですけど。

シーケンス描写についてはMV自体が非常に良質です。そりゃーリック・ベイカーですものね!というところで、つまり『狼男アメリカン』の特殊メイクを手がけた方が担当してるのです。そして監督がジョン・ランディス。まったくほとんど『狼男アメリカン』といって差し支えないでしょう。いや、もちろん演出や音響などの細かい話をすれば別作品なのですが、こと表現の中核である監督と、特殊メイクという表現の技法の意味では何よりも本格的な人狼を作り出した二人が関わっているのです。これでいい表現にならなかったら嘘でしょう。
さらにはメイキングでどのようにモコモコと皮膚が浮き上がる表現をやっているのかを見ておくと別の意味で興奮できると思います。結構方法としてはアナログ。そりゃまぁ30年以上前ですもんね…あの、ポンプで跳ねるカエルみたいな感じで空気の袋を合成皮膚の下で膨らませるという方法、結構いいなぁと思います。実践可能ですね、ラテックスで皮膚を作って、メイク用のノリで顔にくっつけつつポンプの先の袋を仕込む。見た目のアラを気にしなければ気分だけでも楽しめそうなものです。

以下は私の話です。
狼男アメリカン』前後に見た覚えがあるのですが、やはり怖がっていたように感じます。そもそもマイケル・ジャクソンが苦手になってしまった瞬間でもありましたが、それはのちに東京ディズニーランドのアトラクション『キャプテンEO』で払拭されます。『キャプテンEO』もちょっとした変身描写がありますね、別に人から人みたいなものなので紹介はしませんが、女王の邪悪な姿から女神に変わるシーンは感動します。あとフーターが可愛い。逸れました。
後年改めて見ると狼というにはあまりにもマズルが短く、『ティーンウルフ』からちょっと進化したかな?という感じ。今見ても十分に変身しているなぁと思えるのがさすがです。メイキングでマイケルの声でアウ〜って言ってるのはちょっと笑えますがこれまた可愛い。動きについてはどこまでもマイケルなので、どうしても特有のクセが出てますね。
狼男アメリカン』ほど惹かれないのですが、やはり私の根幹に近い部分にある作品ではあります。しかし今見て性癖に刺さる…!と思う『狼男アメリカン』に対して、シーケンスすげー、で終わってしまう『スリラー』。単純に変身の対象が世界的なポップシンガーだからなのでしょうか。それとも変身の携帯なのでしょうか。いずれにしてもシーケンスの意味では大変好きな作品の一つです。

 

というところでしょうか。以上、『スリラー』でした。

『きりひと讃歌』歪みゆく人、小山内

どうも、今回は手塚治虫作品の一つ、『きりひと讃歌』です。
以前別の記事でも書いたのですが、私は変化の方向性としては形の歪み→被毛の発生だったり、ゆっくりと時間のかかるシーケンス描写を好む傾向があります。そういった意味では大変嗜好を満たしてくれる作品であり、また医学の世界のエグさみたいなものを感じちゃう作品です。手塚治虫が医療関係の方に明るかったという話もあるようなので、よりリアルっていうか。

ではいつものざっくりあらすじ。
小山内桐人は大阪のM大学医学部でモンモウ病と呼ばれる奇病の患者を担当することになり、対処療法のみで解決出来ないまま患者は変形による症状で死んでしまう。小山内はこの病気が川の水や土質に由来する中毒だとする仮説を立て、友人の占部とともに研究を始めた。しかし上司の竜ヶ浦教授はウイルス、伝染病説と考えており、考えが相違してしまう。小山内は竜ヶ浦の指示により患者の故郷である犬神沢へ研究のために赴任することになる。それは竜ヶ浦が自分の権威を確立するために小山内を院内から排除するための企てでもあった……

というようなお話。小山内の周りの人間関係がメインのドラマなのでそのあたりは自分で読んでもらうとして、我々的主眼になる変化の理由です。
モンモウ病は頭痛や異食症を発症する諸症状の後、全身に麻痺を起こしながら肉体が変形し、最終的に犬に似た姿に変形して肉体の不備から呼吸困難で死亡するという病。最終的に犬神沢の沢の水に含まれる鉱物が原因で、体内に入り込んだ鉱物がホルモン機能などに影響を及ぼすことで骨格の正常な状態が保てず歪んでしまう、ということが語られます(たぶん。頭が悪いのでこういう細かいお話になってくるとどうにもこうにも…)。
途中、奴隷扱いの黒人の他、白人女性にもモンモウ病が発症していることがわかったり、台湾ですわ感染か!と思われた原因が別のところにあったりと、最終的に物語に深く関わる人物にモンモウ病が出る、という展開です。
モンモウ病は犬神沢の水の摂取をやめれば進行が止まるようで、桐人はそれを突き止めたためにモンモウ病でありながら死ぬことなく世界を旅することになりました。しかし恐ろしいことにはモンモウ病の原因となる鉱物が含まれた水は量が少なくても継続摂取することで発症がありえるようなのです。犬神沢の人間が普段口にしているのは沢の水ではない、ということなのでしょう。発症者はそれぞれ犬神沢の特産となっている酒、医薬部外品を使用したことで発症していました。白人女性のヘレン、黒人の奴隷達は実際にはクオネ・クオラレ病という別の病気らしいのですが、黒人の方は岩から染み出した水を舐めていることがあったということで、こちらでも鉱物の存在が示唆されています。ヘレンの感染源についてはよく覚えていないのですが…
ということで、世界中どこでも特定の鉱物が含まれている可能性があれば発症しうる病気であるというころでした。

痛みは耐えられる、という人には魅力的な病でしょう。実際になぜそういう歪み方をするのかは私にはちょっとわからないのですが、合理的に説明できればカッコイイなぁとか思ったりします。脳の重さに柔らかくなった骨が耐えきれず、重圧から押し出された骨はもともと前側にでっぱっている頭蓋骨の前方に主に負荷がかかって、前側に歪む。その過程でどうしても鼻が顎の硬い部分と頭との圧縮に潰されて横に広がり気味になり、ついで皮膚や肉が歪みから弛むことで犬の口吻の様相となる。耳も同様に軟骨が柔らかくなって垂れ下がる。指は神経系統が麻痺して動きが悪くなり、血行の悪さから筋肉が弛緩して、骨の歪みと一緒に縮こまる。……とかね。

最終的に桐人に真に仇なす人間は大抵モンモウ病となり、それ以外の人物はクオネ・クオラレ病に罹患しているような形になっていた気がします。各種書評にあるように、桐人は名の響きからキリストを模しているのかもしれません。ゴルゴタの丘を獣化という十字架を背負い、人に石を投げられ、社会からのきつい締め出しといういばらの冠を被って歩みを進める姿には切なさばかりが募りました。
手塚作品の中でもかなりのボリュームがある方だと思いますが、文庫で3巻。人生のスパイスにもちょうど良い苦味だと思うので、ご興味があれば是非。

きりひと讃歌』でした。

『マスターモスキートン'99』のこと

どうも、今回は短いです。
マスターモスキートン'99』のウルフレディについてだけ。

もう名前でわかったでしょう?
その宿業がまた悲しいんですよ。
ってことでコチラをドン。

マスターモスキートン ’99 1999 Master of Mosquiton

ルフレディはかつて男性に裏切られたことが原因で、男性からの接触により若干変身するというキャラクターです。
それほど派手な変身ではなかったので紹介にとどめようかなと。

 

こういうの紹介しながら思うんですが、私の思い入れの有無がすごい大きくて、おそらく「俺はこういうのが好きなのに紹介薄い」って思われてる記事とかあると思うんですよね。
ただどうしてもその辺は個々人の好き嫌いみたいなものがありますので仕方ないのかなぁと。
私はなるべく細かい獣化でも意識に少しでも残っていれば紹介する、というスタンスなのでその辺りはご容赦いただきたいです。

なお私に刺さる性癖としては
・シーケンスの有無は問わないけどあると嬉しい
・性別はどっちでもいい(とはいえ紹介はほとんどメンズの獣化なのでコレはもう傾向なのでは…)
・獣化後の姿は出来ればより動物チック、リアルめの状態、不定形とかはやや苦手
・TF後の本人の落胆、恐怖などのネガティブ感情や暴走、自我喪失への恐怖大好き
・元の姿への可変性は問わない。
という感じでめちゃくちゃ幅が広いので、今後もこの辺のんびり紹介していきたい次第です。

 

以上『マスターモスキートン'99』と私の紹介傾向のお話でした。今度傾向はどこかにまとめましょう。

【下ネタ注意】昔のバラエティのこと

どうも、昨日きぐるみをやってきて、処理終えるまでPC触らん!と思っていたので遅れました…
今回は自分の性癖の歪みに一役買った日本のとあるバラエティ番組のお話をします。
しばらくそのイメージに悩まされた幼稚園の子供の苦悩を是非感じて欲しいところ。
ということで折りたたんでおくのでこの先にどうぞ。

 

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『らんま1/2』言わずと知れた大作漫画

説明不要ですね。
どうも、今回は『らんま1/2』(以下『らんま』)です。
特に説明も必要のないこととは思いますが、若い人でなになに?みたいな人がTFに触れたい時のために記事にしましょう。

 てことでざっくりしすぎのあらすじ。
早乙女乱馬早乙女玄馬親子は無差別格闘流の修行のため、中国に渡り修行地の呪泉郷(じゅせんきょう)へ向かう。ガイドによれば悲劇的伝説が多く伝わる泉によって広範囲が埋め尽くされた場所であり、そこでの修行中、父玄馬は熊猫溺泉(ションマオ・ニーチュアン)というパンダが溺れた悲劇的伝説がある泉に、乱馬は娘溺泉(ニャン・ニーチュアン)という若い娘が溺れた悲劇的伝説がある泉に落ちたため、水をかぶるとその泉に由来する姿に、お湯をかぶると元の姿に戻るという体質になってしまう。
元に戻す手段もないまま日本に帰国、そして乱馬は玄馬によって許嫁であると突然紹介された天道早雲の娘、天道あかねを訪ねることになるが…
というどう見ても格闘とラブコメがごっちゃになる展開がめっちゃわかるアレです。
余談ですが『すもももももも』もこんな感じなのでめっちゃ好きなんです。お前は家をついで強い格闘家になるのだ的なのと押掛女房めっちゃ強い格闘家女子のラブコメ。最後の方とか結構真剣に異能格闘技やってるけど。

さて、我々のクラスタなら一度は遊びに行きたい呪泉郷ですが、かの地の泉はなかなか不思議なくらい様々な動物の溺れ死んだ泉があります。
パンダ、黒い子豚、アヒル、猫、鰻と鶴と持ち牛に乗った雪男あたりがメジャーですが、漫画含めこんなにありました、というのがまさかのwikiにございました。

呪泉郷 - Wikipedia

とりあえずざっと見てもそんなのあったの…!?みたいな気持ちになること請け合いです。『らんま』の度量の広さのようなものを感じざるを得ません。

それにしてもある程度の不備というかプールや雨に弱くはなると思うけど、実生活にそれほど大きなダメージがない可逆変身として素晴らしいなぁ…と思うので、是非アニメか漫画はある程度目を通すことをオススメします。妄想にふけりたくなるので(笑)

以上、『らんま』でした。

 

以下余談です。

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『ベッドかざりとほうき』おじさん、ウサギになる

どうも、今回は『ベッドかざりとほうき』です。

恐らく多くの方は『メリー・ポピンズ』はご存知でしょう。スーパーカーリーフラジリスティックエクスピアリドーシャス!

『ロジャーラビット』もご存知かもしれません。ディップまみれにしてやんよ〜です。

どちらもディズニーの実写とアニメの融合した作品ですが、あまり知られていない『ベッドかざりとほうき』もまたそういった作品です。

と、いいつつ私も非常に幼い頃に見たのでうろ覚えです。
今回はものすごいざっくりあらすじ。
戦時中、イングランドの孤児の兄弟チャーリー、キャリー、ポールは疎開先で一軒家に1人暮らしの中年女性エグランタイン・プライスの元に預けられる。対応の冷たいプライスに子供達は嫌気がさし、脱走を企てる。しかし夜中に脱走しようとした時、プライスがほうきに跨って空を飛ぶ姿を見てしまう。そのことがあって子供達とプライスは少し距離が縮まり、彼女が通信教育で魔法の習得中ということを知る。しかし通信教育の先の大学が戦争による閉鎖を決定、プライスは不満に思い、子供らを伴って現地へ赴く。しかし行った先にいたのはインチキ手品師、それまでの教材も適当なものだったというのだが…

というようなお話。
メリー・ポピンズ』が進んで子供を善い方へ導こうとするスパルタな教育者であったのとは対照的に、プライスは自分本位ではあるが優しい魔女というような性格づけです。まぁ子供に優しいのは共通かな。
また途中で動物達の島に向かうシーンもあり、ちょうどポピンズのようにアニメと実写の融合表現などもあり、戦時中であることや実際に戦闘(ディズニーらしい柔らかい表現ですが)はあります。
また魔法自体もそう派手ではなく、映像美などを楽しむというよりは、いささか暗めの世の中を楽しい気持ちで見られるような映画、というような感じで作られている気がします。


ということで該当の動画はこちら。
5:40あたりからです。シーケンスはないですがなんともおかしみがある。

www.nicovideo.jp

 口の動かし方とか耳が動いたのを確認して、というのが…こう、TF界隈にいてもなかなか類を見ない行動であるなぁと、記憶していました。
といってもなかなか全体の流れなどは思い出せず、wiki先生に頼りまくりましたけれども。
自発的なTFで外見より先に行動から確認する、なかなか珍しいし、それこそが私がこの作品をやたらそのシーンだけ憶えていた理由である気がします。また変身するのがオジサンっていうのも良さだなぁと。
個人的にはこの後の鎧の行軍もなかなか面白いと思っているので是非ごらんください。

ということで、『ベッドかざりとほうき』でした。

『おおかみこどもの雨と雪』

どうも、なんとか転職活動が終えられそうです。やったね!そんなわけで気が抜けて寝ちゃいました…

今回は細田監督作品『おおかみこどもの雨と雪』です。比較的最近の作品ですが刺さるものも多く、映画館では溜息が漏れました。

www.ookamikodomo.jp

とくに説明は必要ないでしょう。
あらすじもwikiを見ていただいた方がいいなぁと思います。

おおかみこどもの雨と雪 - Wikipedia

もちろん述べるべきはシーケンスでしょう。
父親である「彼」の変身はそれほどはっきりしていないのですが、それでもなかなか雰囲気がいいです。ちょっと頭を下げて、それを次に持ち上げると、というシーンのつなぎ目がグッとくる。彼の種は狼と人間の境目はかなり自由に行き来できるようですし、本人は二つ足と四つ足の姿を使い分けたり、人間としての振る舞いも普通に行えていました。粗野でもなく、トラックの運転手という仕事にも就いていて、何かおおかみ家系にはちゃんとした教育があることを思わされますね。
そして子供である雨と雪。二人の姉弟の変身は小学生くらいになるまでにはコントロールされつつありますが、不安定です。走り始めてから一つ前転している間に非常に滑らかなシーケンスがあり、また喧嘩のシーンでは狼に変身してから非常にアクロバティックな肉体の動きを見ることもできます。
こういった変身のシーンが非常に多く、その間の姿を楽しむことができる作品です。

個人的には雨と雪、そして花の精神のありようが序盤から変わっていくところも大変良いと思います。
私は雪に感情移入しながら見ていたのですが、 その理由はおそらく彼女が長女であるからでしょう。私にもいうこと聞かないし見下してくるしそのくせメンタル弱めの妹がいるので、なんとなく。
雪は冒頭から引っ越したあとくらいまで、むしろおおかみである自分を強く推し、おおかみの姿になる回数も多かったと思います。雨はどちらかというとどちらの姿もあんまり嬉しくないというか、むしろ悪者にされるおおかみである自分にも、そういう社会にいる人間の自分にも、いささか腰が引けているように見えます。
入学してから、雪は女の子らしさ、というところに目が行くことでおおかみを控え始めます。当然それまでは肯定的な使い方をしてきた体なので、改めて抑え込むとなると暴走があったり不安定になったりしていました。逆に雨はおおかみとしての過ごし方を身に付けることで安定した精神状態になっていきます。やがてそれは強行にも達してしまいますが、雨が生きる姿勢を決めていきます。
雪がおおかみから人間に寄って行くのに対し、雨は徐々におおかみに寄って行く、そして人間である花は二人を人間の社会で生かそうとしながら、最終的には雨の決断を応援するという結末でした。
色々考えるところもありますし、映画を見た人によっては花のことを不快に感じている方もいるのですが、通常の子供よりも育成の難しいおおかみこどもを、少なくとも本人たちが社会に対してどういう姿勢で生きるかを決められるまで、大きな怪我などもなく育ててきた彼女はすごいと思います。
そういった意味で、肯定的な人狼映画がここにある、そしてその母親の姿はある意味では十分現実に似た判断をしているのだろうと、個人的には好ましく思います。

ということで、『おおかみこどもの雨と雪』でした。

 
以下余談。

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