変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『おおかみこどもの雨と雪』

どうも、なんとか転職活動が終えられそうです。やったね!そんなわけで気が抜けて寝ちゃいました…

今回は細田監督作品『おおかみこどもの雨と雪』です。比較的最近の作品ですが刺さるものも多く、映画館では溜息が漏れました。

www.ookamikodomo.jp

とくに説明は必要ないでしょう。
あらすじもwikiを見ていただいた方がいいなぁと思います。

おおかみこどもの雨と雪 - Wikipedia

もちろん述べるべきはシーケンスでしょう。
父親である「彼」の変身はそれほどはっきりしていないのですが、それでもなかなか雰囲気がいいです。ちょっと頭を下げて、それを次に持ち上げると、というシーンのつなぎ目がグッとくる。彼の種は狼と人間の境目はかなり自由に行き来できるようですし、本人は二つ足と四つ足の姿を使い分けたり、人間としての振る舞いも普通に行えていました。粗野でもなく、トラックの運転手という仕事にも就いていて、何かおおかみ家系にはちゃんとした教育があることを思わされますね。
そして子供である雨と雪。二人の姉弟の変身は小学生くらいになるまでにはコントロールされつつありますが、不安定です。走り始めてから一つ前転している間に非常に滑らかなシーケンスがあり、また喧嘩のシーンでは狼に変身してから非常にアクロバティックな肉体の動きを見ることもできます。
こういった変身のシーンが非常に多く、その間の姿を楽しむことができる作品です。

個人的には雨と雪、そして花の精神のありようが序盤から変わっていくところも大変良いと思います。
私は雪に感情移入しながら見ていたのですが、 その理由はおそらく彼女が長女であるからでしょう。私にもいうこと聞かないし見下してくるしそのくせメンタル弱めの妹がいるので、なんとなく。
雪は冒頭から引っ越したあとくらいまで、むしろおおかみである自分を強く推し、おおかみの姿になる回数も多かったと思います。雨はどちらかというとどちらの姿もあんまり嬉しくないというか、むしろ悪者にされるおおかみである自分にも、そういう社会にいる人間の自分にも、いささか腰が引けているように見えます。
入学してから、雪は女の子らしさ、というところに目が行くことでおおかみを控え始めます。当然それまでは肯定的な使い方をしてきた体なので、改めて抑え込むとなると暴走があったり不安定になったりしていました。逆に雨はおおかみとしての過ごし方を身に付けることで安定した精神状態になっていきます。やがてそれは強行にも達してしまいますが、雨が生きる姿勢を決めていきます。
雪がおおかみから人間に寄って行くのに対し、雨は徐々におおかみに寄って行く、そして人間である花は二人を人間の社会で生かそうとしながら、最終的には雨の決断を応援するという結末でした。
色々考えるところもありますし、映画を見た人によっては花のことを不快に感じている方もいるのですが、通常の子供よりも育成の難しいおおかみこどもを、少なくとも本人たちが社会に対してどういう姿勢で生きるかを決められるまで、大きな怪我などもなく育ててきた彼女はすごいと思います。
そういった意味で、肯定的な人狼映画がここにある、そしてその母親の姿はある意味では十分現実に似た判断をしているのだろうと、個人的には好ましく思います。

ということで、『おおかみこどもの雨と雪』でした。

 
以下余談。

 余談ですがその部分だけ資料として映像抜き出してる作品ないかなぁと思ってyoutube探してたら違うもの見つけました。

www.youtube.com

コミュ障の俺ウェーイみたいなのはナシですよ、そういう人は私にはイノシシとかに見えますし。しかしなんともにっこりするのはハードルが高い!