変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

分断された日本の物語『オオカミライズ』

どうも、やっと機会が巡ってきました。単行本待ちしてたんですが、『ウルトラジャンプ フリー!!』という電子媒体で第一話だけ掲載して購買意欲を誘ってくる広告漫画データが私の贔屓のシーモアで配信されました。そこに『オオカミライズ』が掲載され、第一話は現在無料で読むことができます。
てわけでドン。

www.cmoa.jp

あえてあらすじなどを語る必要はないと思います。読みましょう。247Pからです。
あ、ちなみに個人的にシーモアが気に入ってるけど(アプリでもブラウザでも読めるのでkindleにアプリ入れて読んだり、突然読みたくなってスマホのブラウザで読んだりできるのが良い)別に他の媒体で配信されてるの読んでもいいと思います。

雑感としては皇国の守護者を描いていた人だけはあるな、というところ。群体によるアクションや個々人の戦闘の勢いや音の表現、また一定のグロテスクさを持つ作画はこのテーマに大変よく合っています。

この漫画は人体実験によって生まれた倭狼(ウォーラン)達が居場所を守る為の戦いをするものです。冒頭から日本が二つに分かれており、このあと三つになっていることが分かるのだとか。
概ね見える範囲ではロシアに関東以北、中国にそれより南が支配されている様相でしょうか、倭狼達はその国境付近、非武装地帯とされる場所に根城を持っています。これは賢い。と言うのも、非武装地帯があるということは、つまり中国とロシアは互いに領土を奪い合っていると仮定できますし、そもそも倭狼が生まれた経緯は軍事使用が目的であると言えるでしょう。倭狼をロシアに秘匿したがっている様子や、描かれている範囲に軍装を持つキャラクターが倭狼にはいないことから、軍事投入前だった倭狼が脱走したと考えられます。総合して考えると、中国は対ロシア武器として倭狼を作り出したものの、それが実践投入前に脱走、ロシアに取られて技術を奪われる事を恐れて全頭駆逐を考えるも、ロシア国境付近に大軍勢を投入してはロシアに攻め入らせる言い訳を作らせてしまう為、少数部隊で当たっている、というところでしょう。

さらに倭狼は実験段階である事も伺えます。それぞれ年齢がバラバラであり、また程度もマチマチ、「はげしく変形し 人間の姿でないなら 廃棄するしかないが」という軍人のセリフ、マエダさん(人間で言う正面向きの状態で口が左右方向に開き、その両顎が上顎、恐らく眼球が四つあり、殆ど犬のような形)、豊前(豊かな飾り毛はあるがマズルが短い狼男様)、次郎(うっすら全体に毛はあるものの、マズルはなく、鼻がやや上向きのほぼ人間に近い姿)、モブキャラの四足歩行態など、人間からどれくらい離れているかも一致しません。つまり画一的な技術にはまだ届いてないと言えます。この点とにかく立体的な倭狼たちの顔の造形が素晴らしい。ケモいのからヒトいのまでよりどりみどりですごちそうさまです!

こうした要素は好きな人にはめちゃくちゃ刺さると思うんですよ、実験体が逃げ出して自由の為に戦うとか。
ただ、どうも自由というよりは静かな死のために戦おうとしてるようにも見受けられます。ケン、と呼ばれる個体はシルエットからすると非常に大きいようなのですが、その周辺に蹲ったり祈るようなポーズをしている倭狼達がいます。何も考えないようになる、と豊前が述べている為、倭狼とはそういう運命にあるのかもしれません。
また次郎が閉じこもっていても〜と述べていることから、現状争う意思は本当はないようです。また人間であると主張する事からも、彼らがただ穏便に暮らしたいものと察せられます。

ここまでの話でお気づきかもしれませんが、倭狼が生まれつきなのか、実験による変異なのかはまだハッキリしていません。そのため、変異のシーンは1話目には別の意味を持って描かれています。
倭狼はその血が衝撃のある場所に集まって銃弾による負傷を防ぐ、という特質があり、この血が倭狼を倭狼たらしめているらしい、とわかる描写があります。
その血が人間の体内に入ると、倭狼に似た姿に急激に変形し、その勢いに身体が耐えきれずに弾け死ぬ様子があります。
また逆に、倭狼を殺すための弾丸は倭狼を人の姿にして殺します。
マエダさんはそれを見て「彼我は死に方も殺し方も同じ」と述べていますので、この物語に置ける変形は私が確認する範囲ではイコールで死、という状況です。
ただ実験記録の中にある倭狼は人っぽい形をしているので、変形は進行するタイプなのかもしれません。

あとねーもうコレは名前からしてだけど、倭、ってことは国土を占領された日本人を実験隊に使ってるとしか思えないよねホント…まだ和名以外のキャラいないので今後に期待というところですけれども。

以上が『オオカミライズ』第一話の雑感でした。
今後他にもどんな要素絡んでくるのかなぁと楽しみになる感じがモリモリです。
個人的に倭狼を討伐にきている吃狗(チィゴウ)が犬の頭の形のヘルメットを被っているあたりからしても、なにやら怪しい気配がするなとか思っています。
まぁまずは第一話読みましょう、ぜひね!
単行本買ったらどっかで内容補填しよう。