変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『DARK EDGE』吸血鬼物ではありますが

よくBOOK OFFで100円コーナーにめっちゃ並んでる漫画あるじゃないですか。全巻並んでるようなやつ。その内の一作になります。
どうも、今回は『DARK EDGE』です。
カドカワ系は順当なお話になりにくい傾向があり、こちらも比較的ひねった、というかこじれたお話です。全体的に面白かったので、きっと連載当時は人気があったんじゃないかなぁと思います。私はその後になってから読んでいたので、当時の状況はわからないのですが。

www.cmoa.jp

ということでまたいつものうろおぼです。ほとんど上記サイトの試し読みくらい。
放課後のシーンから始まります。土屋と呼ばれる白衣の教師が、放課後に残ってしまっていた生徒岡元に対してナイフを振り上げ、シーンは一度終了。
そして葬儀場のシーンになります。主人公の高城九郎は母親の死によって居場所をなくしており、葬儀場で親類から避けられた状態の中、咳き込んだ拍子に小さな鏡を吐き出します。時同じくして現われた天野という男に、父親の要望ということで都内の四辻学園という高校に転入させられます。出迎えた教師達に九郎の父は理事長だと紹介されますが面会は出来ず、ひとまず九郎は四辻学園で学校生活を始めます。学校には不思議な規則があり、日没後の学園の門は閉じられるため、居残りは禁止になっていました。しかし九郎と数名のクラスメイトは日没後の学園内に残ってしまい、そこで岡元に襲われてしまいます。彼女の身を案じていた赤坂が真っ先に捕らえられてしまい…

というところで様々な要素が明かされていきます。
ざっくりと何がどうなってるのかお話しします。
この作品の世界観には、
非素質者(普通の人間)
素質者(普通の人間)
不死族(いわゆる吸血鬼/イビルジーンという感染源を持つ)
シード(吸血鬼の王の資格を持つ人間)
という4種の立場が存在します。
非素質者は普通の人間です。不死族によって殺される、または死んだ後にイビルジーンを与えられて感染することでゾンビ化します。ゾンビになると最初のうちは元のように喋り、動きますが、次第に呂律が回らない、動きが鈍くなる、体が崩れるなどの障害が現れ、最終的には蠢くだけで何もできない残骸に成り果てます。これらは特殊な炎で燃やし、イビルジーンごと消し去ったり、同族食いをする別のゾンビに食べさせる必要があるようです。
素質者は名前の通りです。前述のイビルジーンを受け取る素質を持ち得る人間で、主人公達の半数以上がこれにあたります。イビルジーンを受け取ることで特殊能力を得てキャリアとなります。キャリアの能力は不死族を殺せるだけの能力になり、電気や炎、単純な能力強化など、様々な恩恵を得ます。ただ、力の強い不死族のイビルジーンはキャリア化せずに相手を殺してゾンビ化させてしまうようです。
不死族は前述の説明からもありますが、ノスフェラッツと呼ばれる種族です。吸血鬼という書き方には大分語弊があることは理解しているのですが、わかりやすさを優先しています。実際には食人タイプの非人間種族で、人間の血液や肉を主な食料としています。『東京喰種』とよく似ています。あそこまで極端ではないのですが、普通の食事があまり美味しくないようです。不死族のほとんどは王を頂点とするピラミッド構造で、王からイビルジーンを受け継いだ親、そしてその子、さらにその子を親とする子…というようにイビルジーンの持ち主と受取手の親子関係が築かれていきます。受け継がれる度に劣化してしまうので、次第に弱い不死族になっていきます。学園内の先生がこの不死族であることが多いです。
シードは王だけが持つ人間を不死族の王にする因子です。これは王、ひいては不死族の由来がある木の実の種を飲み込んだことで人間から変異した、という由来からなります。シードは王が人間との間に残すことができ、男女の双子が必ず生まれるという形で引き継がれていきます。細かい説明は省きますが、これはイビルジーンからの侵食を防ぐ効果を持っているため、シードの所有者は通常イビルジーンに感染はしないようです。
こういった立場から学園内の様子を楽しむ漫画でした。もちろんかなりのサスペンス要素もありますし、ホラーでもありますので、結構グロめのシーンもあります。

 

で、やっとか!と思われると思うのですが、TFの要素のお話。
不死族の中に、ルー・ガルーという女性がいます。彼女は人の口から中に入り込み、中身を食べるという習性があります。名前に反して見た目にはほぼ人間ですが、彼女が感染させた子にあたる、土屋という教師がジョン・ガルーという名前の不死族であることが重要です。あらすじの冒頭にいた人ですね。
土屋は作中最弱と言われる不死族で、多少素行の悪い教師です。彼はもともとかなり前の世代(おそらく中世か近代でも100年以上前)には西洋の国の肉屋の息子で、父親が羊の肉でオナってることを周囲の人間に揶揄され、父親には不出来な息子と扱われ、そのストレスから屠殺した羊の頭が自分を責め苛む幻覚を見るほどのノイローゼになるなど不遇な生活を送っていました。そうした鬱屈から、彼は捕らえ殺した女性の目や口を縫い付けては放置(保存?)する連続殺人鬼と化します。それをいい素質をもっているのでは、と見初めたルー・ガルーによって不死族となり、その後は不死族として殺人を行います。
不死族になったジョンは人間の姿とは別に、トラウマである羊の頭を持った人狼のような姿になります。そのシーンは一度のみでシーケンスもありませんが、なかなかカッコイイんですよ。SCP-1471みたいで。ちょくちょく腕のみ獣化したりもしているのでそういう感じのライトなTF好きな方はそれはそれで楽しめるかと。

全体的に複雑で最後まで読むのに15巻、BOOK OFFでもちょっと時間はかかると思いますが、十二分に楽しめる作品ですので、是非読んで見ていただければと思います。
ということで『DARK EDGE』でした。