変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『悪魔の犬エリンチャ』収録『エミューになったおばあさん』

幼稚園に入った頃から、私は図書館に行く度あれこれと変身譚を探して回りました。その内の一つとして、小学生の頃に読んだ『エミューになったおばあさん』を挙げたいと思います。どうやら絶版らしく、Amazonでも中古があるっきりです。まぁ海外向けのオークションサイトには少しあるんですけども。

オーストラリアの昔ばなしに収録されていた話は殆どが動物や植物は人がなり変わったものでした。表題作の『悪魔の犬エリンチャ』も、祭りの後に眠りこけている男達を丸呑みにし、一人の男に退治されたあと、人の姿に戻る、とありました。また私の中で印象強く残っている『エミューになったおばあさん』は、動物の形質をこのような理由でそうなっている、とよく観察された上で描かれた物語でした。

朧気ながら記憶している所によれば、

昔、子供達に厳しくあたるおばあさんがいました。朝から晩まで働かされていく内、子供達はその苦境の中から鳥になって逃げ出してしまいます。おばあさんも遂にはブツブツと文句を言いながら歩き回るエミューになってしまいました。

というもの。作中で怪我をした子が傷口の膿を取ろうとして膿が跳ね、目に入った事からあの鳥は目が白い、という描写がなされたり、エミューは遠くから見ていると常に何かブツブツ言っている、という観察からくる言葉があります。

またもしどういう文脈で語られるのかが気になる、という場合は、オーストラリアの昔話、またはアボリジニの昔話として検索するとワニになった女の子のお話を見つけることができます。習性や姿をよく観察し、その行動の意味を民話、という形で伝えているようです。

この昔ばなしの背景を思うと、狩猟の対象となって来た生き物も起源は同じであるという深い業、或いは感謝のようなものを感じます。こうした童話や民話、神話など、いわゆる神代からの話に変身譚多く見られるというのは面白いです。

いずれ『悪魔の犬エリンチャ』を購入したあかつきには、この記事をより詳しいものに変更したいと思います。