変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

【コラム】変身願望を持つ人々(1)特にコスプレときぐるみについて

どうも、今回も閑話休題です。
今回はリアルレベルの変身、特にコスプレと言われる文化圏の人々と、きぐるみと言われる文化圏の人々の話をします。
興味がない人もいると思うんですが、変身という本来人間には不可能に近い事象を、メイクや制作物によって行なっていく、という手法が私は自身でも行うくらいには好きなので、いい機会かと思ってまとめてみようと考えました。

先日友人であるガチマグロくんと、以下のような会話をしました。

 

 

 

 

 

 

 
コスプレときぐるみは相容れるか、という話ですね。
まず率直に言って、コスプレがきぐるみを内包することは可能だと感じました。
そしてきぐるみがコスプレを内包することは無理だろうという感覚がありました。
返答する前にいかなる理由からそう判断したか、それについて打開策はあるのか考えた上で、一回目の返事をしました。それが版権云々のあたりですね。

その後、時間をかけて考えた末、私の中ではコスプレときぐるみは同じ変身の世界でありながら、大きな乖離があり、似て非なるものであるため、相互理解は不可能であるとまで考えてしまった訳です。
現実的な話として、コスプレの世界は包括的にきぐるみを置く事ができるのですが、きぐるみの世界ではコスプレを受け入れられません。この辺、『けものフレンズ』がTFやケモノであるか否かという問題にも近く感じるなと考えました。

しかしながらあくまでも上記はコスプレ、きぐるみをそれぞれ10年以上続けてきた人間の意見であり、他の同じ趣味の人々がどう考えているかはよく分からない、というのが本質です。

と言うことで、グーグルフォームを使ったアンケートに踏み切ろうと思います。
コスプレイヤーときぐるみの人に答えてもらうことで個人が集め得る最大値のデータで統計を取り、どんな人達が、いかなる心持ちで一時的かつ自発的な変身を行っているのか、という、一つの指標としたいわけです。
ひとまずここに意思表明をした上で、調査前の私の考えを述べようと思います。

 

今回は前提条件のお話をします。
恐らくですが、コスプレイヤーときぐるみの人々はお互いにお互いが何者かを知りません。そしてお互いを違うものだと思っているでしょうし、もしかしたら自分がどのようなものかもわかっていません。まぁ私も自分がなんでレイヤーできぐるみなのか分かってないので、ここでこのブログに限定した一つの定義を決めてみたいと思います。

 

コスプレイヤーとは:
wikiのコスプレの項目によれば
「コスプレとは漫画やアニメ、ゲームなどの登場人物やキャラクターに扮する行為を指す。それらのジャンルの愛好者や同人サークルが集まるコミックマーケット同人誌即売会を始めとする各種イベント、また、ビジュアル系バンドのライブ会場等で見かけられる。コスプレを行う人をコスプレイヤー (cosplayer) と呼ぶ。」とのことで、概ね私の示したいものとしては一致しています。細かく分類すれば、オリジナルでも非実在(架空)の存在の衣服を着用したり、本人が「このような意図のコスプレである(例えば架空男女のデートを想定したコスプレというのもアリなのです)」と発言すればコスプレたりえます。
注意して欲しいのは、この項目の下部に着ぐるみが含まれていることです。着ぐるみは「キャラクターに扮する行為」であることは確かなので、傍目から見ればこの階層に含まれるものということになります。もちろんその判断に抵抗がある方も多いと思うのですが、実際には既にコスプレの下位(これは下であるという意味ではなく含まれる、というところです)のカテゴリなわけです。

今回は「一次創作・二次創作を問わず、何らかのキャラクターを想定した衣装の着用を行い、撮影、パフォーマンスを含むなんらかの活動を行う人々(ただし後述するきぐるみを除く)」を想定します。

 

きぐるみとは:
wikiの着ぐるみの項目によれば「着ぐるみ(きぐるみ)とは、人体着用ぬいぐるみ(じんたいちゃくようぬいぐるみ)の略で、人間が着用可能な大型のぬいぐるみを指す。友好親善イベントや遊園地のエンターテイメントショー、テレビ番組などで用いられる特殊衣類で、中に人間が入り、全身を覆い姿を変える演出で使用される。」とのこと。
大分類としてはこんなところです。
今回のテーマでは「一次創作・二次創作を問わず、何らかのキャラクターを想定した動物(ケモノ)の着ぐるみの着用を行い、撮影、パフォーマンスを含むなんらかの活動を行う人々」を想定します。
なお私は「着ぐるみ」をドールタイプや市販、ゆるキャラを含む広義の表現、「きぐるみ」を今回定義したケモノきぐるみに限る狭義の表現として、この項目の中で分けて使用します。

ということで大体の分類とします。

 

次にコスプレの人口について述べたいと思います。

アクティビティを度外視して、コスプレイヤーアーカイブというサイトを統計に使ってみようと思います。
コスプレイヤーズアーカイブ(以下、カイブと言います)は、日本のコスプレ黎明期、揺籃期を終え、ある程度の確立期(この辺の評価についてはこの記事の一番最後に付記しておきます)に入った頃にできたサイトです。Cure(現在Cure WorldCosplay)との差別化を計りながら出来上がったSNSで、当時のコミュニケーションの台頭だったmixiとよく似た作りになっています。コスプレイヤー(以下、レイヤーと言います)の利用に特化している為、サイト内にイベント情報やユーザー同士のやりとりが可能なフリーマーケットなどが設置されています。
なおCureを参照しない理由ですが、かの媒体は現在の登録人数をサイト上に開示していないようです。この為、統計が非常に取りにくい状況にありました。その為、今回はカイブのみを参照としています。

カイブには
325094人(2018/01/21 18:28時点)の登録者がいます。
内、
男性レイヤーが14476人、
女性レイヤーが149530人、
で、総合ユーザー数の約半数を占めています。
そして
プロフィールに「カメラ 撮影」の2つのキーワードを含む登録者を暫定カメラマンとします(カメラも撮影もしませんが登録しましたというタイプもいるのは承知しています)。
男女合わせて4986人
が、カメラマンです。
残りは閲覧者です。
カイブの多くのページ(ユーザー設定による)は、登録者またはフレンドを対象にしているという個人的な感覚があります。その為、閲覧のみでも登録している方はいます。
上記の数値から、レイヤーは女性9割の世界であることが分かります。
そして日本語がわかるユーザーだけでも15万人が存在し、
カメラマンとしてコスプレイヤーと交流する人物が5000人近くいるということがわかりました。
コスプレという趣味の規模が非常に大きいことがわかります。

 

次にきぐるみの人口です。

JMoFという3日間ホテルを使用するイベントが日本にはあるのですが、恐らくきぐるみを含むケモノオンリーイベントとしては最大級と思われます。
このホテル内を使用するスタイルは海外のFur(Furry/日本語ではケモナーに相当すると思われます)のCon(コンベション/コミケのような感覚で、プロアマ問わずの各種サークル参加者とレイヤーに相当する人々、また参加者の集う場)と呼ばれるイベントが、アメリカやドイツ、スペイン、ロシア、フィリピンと各国で年数回、それぞれの主催団体の主導で行われており、そのスタイルを取り入れたものです。通常の即売会やコスプレのイベントは概ね最速で朝集合夜解散なのでだいぶ毛色が違ったものになります。
日本では他にも小規模なConやKemoconと呼ばれる起源の古い(前進にとらんすふぁというイベントの存在のある)イベントもあるのですが、今回はこのJMoFを参照してみましょう。

まずJMoF公式ツイートを参照します。

 JMoF 2018の総参加者数998人とのこと。
なお前年のJMoF 2017の総参加者数は845 人。
海外からの参加やきぐるみなしの参加の方が含まれた総数であり、実際のキャラ数ではありません。
恐らくですがキャラ数は400くらいかと思われます。おそらく、というのは、全体数はスタッフしか把握し得ない情報になっている状態だからです。
しかしホテルの部屋数や写真をざっと見た感じ、概ねこんな数字ではないかな、という判断をしています。コスプレイヤーとは比較にならないほどの少人数ということになります。また、その少人数の内、女性が100人いるとは考えにくい状況にあります。よくて50人、少なければ20〜30といったところでしょう。これは個人観測範囲で申し訳ないのですが、この手のケモノきぐるみを所持している、と公言している女性をtwitterで検索しても30人を超えないな、という感触でいるからです。
男女比もコスプレとは真逆となる訳です。
丁度
コスプレが男1:9女、
きぐるみが男9:1女
という構図です。私はよく「きぐるみは8割男性」と言ってましたが、事実上9割ということになりますね。

 

コスプレ、きぐるみは、いずれも衣装となるものを持ち込み、更衣室にて着替えをし、しかるのちに出来上がった自分を楽しむという趣味なのですが、数値の面だけでもかなりの相違が発生しています。
余談かつ私の個人観測ですが、TDC(東京ドームシティ、恐らく収容数は最大級で都内イベントでは2位の人気/1位のアコスタについては別に記述します)では4年ほど前にやっと男性更衣室がそれなりに広くなりましたが、依然女性更衣室の半分あるかないかという大きさです。覚えている限り一番古い10年前のTDCのイベントでは、女性更衣室のテントが奥行きが広かったのに対し、男性更衣室テントは大型のテント一つ分という狭さでした。
対してきぐるみですが、JMoFは自室更衣が可能なので統計が取れませんので、錦糸町で行われたKemocon4thを例に上げてみます。あくまでも私の参加した時ですが、こちらは男性更衣室が大きなホール、女性更衣室は会議室といったところでした。また先述したとらんすふぁに遡ると、その折は川崎の会館で女性の更衣室には小会議室を使用した記憶があります。

いわばコスプレときぐるみは人口と、そこから派生する施設の使用状況から考えても、真逆の仕様ということになるわけです。

 

人口と男女比が分かったところで、次に活動傾向について述べてみたいと思います。

まずコスプレの活動傾向です。
レイヤーには大枠として「遊戯派」と「撮影派」がいるものとします。
はっきりと明言されているものではないのですが、レイヤーはコスプレをした後の活動の傾向が顕著に違います。またさらに小さく分ける部分もあるので、以下にその傾向を記述してみます。
コスプレをして交流や施設を使用して遊ぶことが主眼の人々を「遊戯派」と定義してみます。
「遊戯派」には標準のカメラ(スマホコンデジ)で自分達の姿を撮影しつつ、レジャー施設(TDC、としまえんなど)であればそのアトラクションを楽しむ人々がいます。その人達を「遊戯派交流レイヤー」とします。大体お一人ではなく友人達と楽しむことが主点になることからです。
「遊戯派」にはさらに、TDCその他のイベントの中でホールにて行われるダンスパーティに参加することをメインの目的とした人々がいます。それを「遊戯派ダンパレイヤー」とします。彼らは一人でも遊びに来て、創作パラパラやいわゆるユーテクのダンスを楽しみます。
「撮影派」はその名の通り撮影をメインとする人々です。その中でも作品作りとその出版を行う人々を「撮影派出版レイヤー」とします。
ではそうではない人々もいるのか、といわれるといます。
「撮影派」のレイヤーの中には、顔見知りとだけ楽しみたい、あるいは出版はしないが作品作りがしたいという傾向の人々がいます。大体はイベントではなくスタジオやロケで撮影をしている場合が多いので、「撮影のみレイヤー」としてみましょう。
いずれも活動の内容を卑下したりする意味でのことではなく、活動傾向なので、複数にまたがっている人もいるものとします。

次にきぐるみの活動傾向です。
きぐるみには概ね「グリーティング」と「チャリティー」の人々がいると考えられます。
「グリーティング」はディズニーリゾートなどでも言われるように、キャラクターとの交流です。交流することに重きを置いており、自分達の楽しみが優先される人々を、私はあえて「グリーティング派」とか言ってみることにします。
「チャリティー」は公益的な活動・行為という名目ですが、この場合は「チャリティー派」として交流対象をケモナーとしない人達、あるいはボランティアで各種イベントに参加したりする人々を示してみます。
しかしJMoFやKemoconへの参加は概ね「グリーティング派」であり、あえて「チャリティー派」の人々に触れる必要はないでしょう。というのも、彼らは割と自発的にコスプレイベントに参加していたり、各地のイベントにアトラクションとして参加したりしていることが多い(少なくとも5年くらい前には見かけていた)からです。
「グリーティング派」の分類はそれほど必要がない、というか、あとは概ね制作段階や個々の思想の話になるので今回は割愛とします。

 

コスプレにおける衣装の分類について考えます。
コスプレはwikiの項目にあるような分類がなされるわけですが、ここではあえて
「二次創作タイプ」
「一次創作タイプ」
「性的タイプ」
という三つのタイプに分けてみます。
「二次創作タイプ」は名前の通り、同人活動的な側面が大きなタイプです。レイヤーの中ではもっとも数が多い人々であり、さらに「自作派」「購入派」に分けられたりします。大体は自分の今所属するジャンルに合ったイベントやスタジオに出向き、活動を行います。
「一次創作タイプ」は主催する一人ないし参加者が協力し、自分達の創作する世界観を表現するタイプです。いわゆるポートレイトとの違いとして、異性装や奇抜なウィッグの着用など、架空のキャラクターである符号を持っていることが多いことが挙げられます。とはいえボーカロイド作品『Just be friends』みたいな世界観を友人男女で表現したい!となればほとんどポートレイトなので、その写真にいかなるストーリーを持たせるかなどがポイントになるのかもしれません。
「性的タイプ」は一般的にはレイヤーとしてカウントされないのかもしれません。うしじまいい肉さんのような露出が過多であったり、既存キャラクターの露出を増やしたりして、性的なアピールを行うタイプのレイヤーです。性行為まで発展しているかどうかは当人のみぞ知るところなので私としてはよくわかりません。少なくともそう言った際どい、あるいはアダルトな撮影が行われている事実は観測できるので、分類してみています。なおAVへ出演している女優さんのコスプレは観測範囲外です。

きるぐるみにおける制作分類については
「一次創作タイプ」
「カスタムメイドタイプ」
「二次創作タイプ」
「性的タイプ」
に分けられると考えています。
「一次創作タイプ」はもっとも数が多い、原作を持たないキャラクターを作成し、自己の内面の露出として着用するタイプです。「自作派」「購入派」が存在し、自分で自己のFursona(以下、ファーソナと言います)と呼ばれるケモノとしての人格(Fur+Parsona)を作り上げるか、誰かにファーソナをデザインとして委託してオーダーメイドで制作を頼む形が多いです。もちろんキャラはキャラとして切り離して考えている方もいるので、全てがファーソナではあり得ませんが、ある程度自分の内面にあるケモノ像を表に出す行為ということでは共通すると思います。
「カスタムメイドタイプ」とは、一部の業者、製作者で最初からある程度準備されたモデルに対し、自分が着用可能な形にサイズの変更や、許可される範囲のアレンジを注文し、購入するタイプです。オリジナルのデザインを用意する必要がないため、楽に自分の新しい姿を購入することができます。一方で大変値が張ることも確かです。
「二次創作タイプ」はいわばコスプレのきぐるみ版です。ポケモンやマイリトルポニーを始めとした各種原作のあるキャラクターの姿を作成(購入)し、それになりきるものです。はっきしりたキャラ性を獲得したものよりはぼんやりしたもの、例えば性格が個体ごとに違うポケモンが好まれているような傾向はあるな、と考えられます。
「性的タイプ」とは、名前の通りセックスを始めとするアダルトな行為に利用されるものをいいます。実際の行為の様子などがインターネット上にアップロードされていることがあったり、それ専用として作られたものが存在しているため、一応の分類を行いました。恐らくコスプレのイベントなどでは遭遇することはないはずなのですが…。

 

分類はこんなところでしょう。
上記の中で、主に今回は交流派に分類できる「遊戯派レイヤー」と「グリーティング派きぐるみ」の人々に焦点を当てる形になるかなぁと思います。
ひとまずはこんなところでしょうか。
次回は質問の内容が決まったところで、その質問に関して私の個人観測から得られる数値を当てはめていくことをしてみようと思います。

 

しかし世にはこんなに変身したい人たちがいるんですね。そしてその多くは女性です。女性の方が簡単に変身に乗り切るのは一体どういうことなのでしょう……見た目を飾ることが恒常化しているからなのか、それとも?
いずれその辺にも触れてみたいですね。