変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『七ツ風の島物語』厳密には獣→獣ですが

このドマイナーなゲームは後々まで私に影響しているんですよね。
どうも、今回は『七ツ風の島物語』(以下『七ツ風』)です。

セガサターンでスクエアから発売されたゲームであり、
また雨宮慶太監督作品です。『牙狼』の人っていえばわかる人もいるかも。
もしセガサターンの互換機が出たら真っ先に買うなぁと思っているのもこのソフトのためですね。
現在は移植予定もなく、スクエニのサイトに形骸だけ残ってます。

七ツ風の島物語 | SQUARE ENIX

しかし私はこのゲームはキャラクターの存在が素晴らしいことを声を大にして言いたい。

で、いつものあらすじをば。
殻に覆われていた竜人はその殻を破って飛び出してきます。しかし羽が大きくないため地面に落下。自分が空の浮島にいたことを知りますが、それ以外のことはよくわかりません。カバンに入り込んだタネを植え、大きな樹木に扉が出来上がり、導かれるようにその中に入ると竜人は閉じ込められてしまいました。そこで奇妙なドアの上の顔に話しかけられた竜人は、世界の事が記録されている本に触れます。そして自分の名前や好きなものや嫌いなものを思い出した竜人はそれを本に記録しました。
そして物語は作られて行くことになります。というようなお話。
ということで動画その他をば。

www.youtube.com

全体的にアニメなんですが、ムービーがストップモーションだったりキャラクターのグラフィックの書き込みが半端なかったり、また『moon』や『聖剣伝説レジェンドオブマナ』にあるような異世界言語による会話がなされています。その中でも倫理などの感覚がかなり違っていて、異世界っぽさの要素が強い作品とも言えます。

http://www.crowdinc.com/special-7.html

本家雨宮慶太監督のサイト。キャラデザインの多彩さと精彩な筆致がたまんないんですよ、表情も可愛いし。
で、このキャラクター達が存在する世界には全ての生物が必ず経験する変身があります。その話をしたいわけです(笑)
この『七ツ風』の舞台となる島にいる生き物は、概ね「前身年」「さなぎ」「後身年」というプロセスを経ています。主人公ガープも元はとても大きなドラゴンでしたが、さなぎになって生まれ変わった姿はフクロウを彷彿とさせる小さく可愛い手足を保った中年男性のような(なんか書いてると全然可愛くない)生き物、竜人として活動を始めます。登場するキャラクターの中には今が前身年の者もいればすでに後身年の者もいます。その差はあまりわかりません、実際に作中で大人になるのはイール、モール、ムール、シールというボールのような芋虫の兄弟だけなので。ただ、さなぎになると前の事は名前、好きなもの、嫌いなものを除いて忘れてしまいます。イール達も例外ではなく、羽化したあとは世話になった竜人には目もくれずに飛び立ってしまいますし。また概ね後身年の方が人に近い体型になっているようです。

変身とは関係がないのですが、それぞれの動物の動きがまた非常に秀逸です。個人的には足が多ければ多いほどすごくいい動きをする、とだけ伝えたいところ。
また収集要素が楽しいゲームでもあり、全シナリオをクリアした後にグラウ竜という竜の骨を集めるイベントもあります。

さらに脱線ですが、トモダチの一人である少年キスケは後身年です。彼はそれをゲーム中で語られる訳ではないのですが、『ガナパの手』という世界観を同じくした作品に登場します。カタムというハサミの手を持った機械の世界の少年と、ヤタムという指の手を持つ木を植える世界の少年が、ガ(我)と呼ばれる怖い生き物から生まれたハーフというどちらの世界も同時に見ることができる生き物の出来損ない(目をガに入れてもらえませんでした)が関わることでお互いの手が入れ替るところから話が始まります。カタムの世界のスイッチは機械の世界の王様しか押せなかったのですが、カタムにも押せるようになりました。ヤタムの世界の木を切る事が出来るのはハサミをもった人形だけでしたが、ヤタムにも切れるようになりました。やがて二人が見つけた不思議なトリガー(スイッチと木)によって二人はガとの戦いに赴くことになっていきます。
二人の少年が最後にたどり着くのが七ツ風の島です。その島でさなぎになったヤタムとカタムは、一つになってキスケとして後身年に入る訳です。

どちらも日常急いでいる人ほどゆっくり楽しんで欲しい、というより、『七ツ風』はキャラクターの行動が遅かったり、切り替えや入れ替えなど時間がかかりやすく、どんなに焦っていてものんびりクリアすることになります。また『ガナパの手』はノリとハサミで本を切りながらでないと読み終えられない(でももったいなくてコピーですませちゃいましたけど)ので、こちらも非常に時間がかかります。
非日常時間を過ごすのにピッタリですし、前身年と後身年での思考や行動のあたりも面白い要素だと思います。

 

もし、セガサターンがあって、もしくは時間とお金があるなら、是非楽しんでいただきたいです。

ということで『七ツ風の島物語』でした。