変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『クロアキメラ』打切が惜しすぎる作品

どうも、今回は『クロアキメラ』です。
マッグガーデンは『魔法使いの嫁』といい『とつくにの少女』といい、マッグガーデンはいい感じのTF作品が結構掲載されているんですよね。
いい意味でも悪い意味でも少年漫画的、少女漫画的でない、
市井にあるウケる漫画の集まりというような。
twitter出身みたいなやつですね。『ドラゴン、家を買う』とかTFこそないですけどめっちゃ面白いですよ。

comic.mag-garden.co.jp

ざっくりあらすじ。
中流区に居住するルカは就労パスを取得して清掃員として働きに来ている貧困区のウィルと友好関係にあります。しかしある日を境にウィルの姿を見なくなり、彼が一緒に行こうと口にしていた酔蝶花(ズイユエファー)の紅 月(ホン ユエ)を尋ねます。しかしガードマンにボコボコにされて、たまたまそこを通りがかった美女に帰るよう諭されますが、足を挫いてしまっていて動けなくなってしまいました。彼女の助けでルカは白部診療所にたどり着きます。
白部隆臣は貧困地域の第三管区の医者です。彼に治療を頼んだ美女が目的の月であり、また月はウィルを知らないということも明らかになります。ルカは白部に案内を頼み、ルカの家に辿り着きますが…

ということでここからが我々的に本番です。ウィルはチャイムを鳴らしても出て来ないので、白部が部屋のドアを蹴りあけてしまいます。部屋の奥でうずくまっていたウィルは「見ないでくれ!」と叫び、ルカに体当たりする形で窓から落下します。ルカが見たウィルは顔の半分ほどが鱗に覆われています。
四不像病(キメラびょう)と呼ばれる病気に感染していると言われ、それが貧困区域に15年ほど前からぽつぽつと、最近増えて来た症例で、治療薬がないことがわかります。そしてウィルの様子から症状が重く、高い痛み止めでなく、安いドラッグを使っているであろうことも示唆されます。
ドラッグでおかしくなっているウィルは左半身がトカゲ化しています。
その間の会話の中で、四不像病は軽症で「亜人」、重症で「半獣」と呼び分けられた上で、白部が「獣人」であると言われています。


この漫画では部分的に動物の能力を獲得するものを「亜人」、見た目、能力に大きく変化のあるものを「半獣」と呼びます。
先述した中では月が蜘蛛の亜人、ウィルがトカゲの半獣、そして白部が狼の獣人です。
月は髪の毛を蜘蛛の糸のように射出する勢いで搦めとる、ある程度自由に動かせるといった能力です。身体的な特徴はありませんが、もしかしたら髪の毛を短くはできないかもしれません。
ウィルはあまり描写されていませんが、爪、牙を備え、硬い鱗もあり、かつ筋力が上がっているように見受けられます。
二つのタイプの四不像病では姿はそのまま固定されますが、白部の獣人タイプは非常に稀なことに、人間と獣人の姿を行き来します。基本は人間の姿で、本人の制御下で耳や尻尾、爪、牙、顎の横に毛が生える、といった部分的な獣化を起こします。しかし制御を離れる(空腹が主なトリガーです)と、いわゆる趾行性の関節を持ったタイプの獣人となり、全身の服は破れ、暴走状態になります。

 

白部が獣人になる過程について2巻で語られていますが、その苦悩っぷりとか人から獣に移行するのを止めようとしては引きずられて行く感じとか、無理やり獣になっていく姿は十二分に楽しめると思います。正直なところ2巻だけでTFは楽しめますが、やはり前後の話あってこそ、と思いますので、1〜3巻はしっかり読みたいところです。
…が、4巻まで出ているんですね、こちらの漫画。
実はかなり中途半端なところで打ち切りになっていて、それが自主的なものか編集の判断かわかりかねますが、70Pを超える膨大な設定資料を掲載して終了となってしまっているんです。
本当…あの…この後のエピソードで白部以外の女性の猫獣人の登場や、それまであまり出ていなかった他のキャラクターのエピソード、また四不像病の発生についてなど触れられるようだったのですが…もうなんか、同人誌を作ってね!と言わんばかりの設定集で終わってしまいました。同人誌作りたいマジで。

とりあえずオススメの2巻の冒頭で続きが気になってほしいところです。

sp.handycomic.jp

オススメはしないけどゴニョゴニョがゴニョでこの2巻冒頭の7話を全部読めることは読めるけど、うん、買ってほしいな私は…買いましょうね。高くないからこの本。

 

割とちゃんとした、というか都市部の設定とかバックグラウンドがかなりはっきりしていて、本当にオープンにしてもらえたら設定を使用した白部達以外の四不像病の患者や警邏、酔蝶花のお客、といったあたりで遊べそうなものです。

ということで、『クロアキメラ』でした。
あー記事書いたらもう一回読みたくなった。読もう。