変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

趣旨とは外れますが劇団四季の『CATS』

どうも、今回は劇団四季の『CATS』について。
言わずと知れた大作ミュージカルです。
今回は人間が演じる猫の猫らしさについて話していこうと思います。
いわば猫として振る舞うことで人が猫化しているようにすら見えるという、現実レベルの話です。

 

私は幼少期は観劇に親しみ、その後小学生〜高校生くらいまでは足が遠のいてしまいましたが、大学入学時に文芸としての演劇を学んだことでまた演劇への興味が復活し、その後はいわゆる若手のミュージカルなどへ足を運ぶようになりました。
その後、あるきっかけから友人達と『CATS』を見に行くことになりました。その友人がまたTFクラスタであることも私には随分楽しいことでもあったように思います。

というところで公式サイトをドン。

www.shiki.jp

ストーリーとキャラクターをご覧いただけるのがよいと思います。
ざっくりあらすじ。
野良猫達の中にはジェリクルキャッツと呼ばれる強くて個性的な行動力のある猫たちがいます。彼らは年に一度、一匹だけ天上に上り新たな生を生きることを許される、最も純粋なジェリクルキャッツを決める舞踏会を行います。その年のジェリクルの命を授かり再生するのは誰なのか…

猫達はそれぞれにオールドデュトロノミーと呼ばれる哲学者のような猫に自分の生き様やそのスキルを発揮して自らを主張していきます。
人気のマンカストラップやラム・タム・ダガー、シラバブといった猫達がしなやかに踊る姿はもちろんですが、私はその舞台構成に非常に心惹かれているわけです。

見に行ったのは横浜公演でした。
ということでまず横浜公演の動画をご紹介。

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横浜に設置された『CATS』専用の劇場。観客はチケットを購入してロビーから客席に入ると、既に自分がジェリクルが誰なのかを見にきた猫の一匹です。
劇場は円形で、客席は290度ほどもあり、さらにはその壁はゴミの山です。古いぬいぐるみや着古した服、何かのパッケージや食べ残しのゴミがうず高く積まれ、そこに赤い客席が大人しく客を待っているのです。
開演すると、場内は真っ暗になります。そして二つ並んだ光があちらこちらに浮かぶのを見ます。あたかも猫の瞳のような黄緑色な光が客席の間をまるで何かを探すように動き回り、やがてそれが中央の舞台へと集まります。
ジェリクルキャッツを知っているか。その掛け声のあと、舞台が照明に照らされて見えるようになります。
舞台の上には特徴的なウィッグとタイツのようにボディラインを強調する衣装を纏った演者が集まっています。
彼らの驚くべきところは、歩くときにほとんど足音を立てないことです。体重の乗るトン、トン、という軽く小さな音こそしますが、足音らしい音はいっさいしません。そして本当にスムーズに立ち歩いている状態からスッとしゃがむように舞台の上を滑ります。
飛び跳ねたときに動く尻尾はまるで猫のそれで、おそらく何かただの布ではない素材が使われているのだろうなと思いつつ、その柔軟な動きに驚くばかりでした。
メイクの効果もあると思うのですが、人の顔の輪郭がぼやけ、猫のようなそれに見えます。
さらに誰かが自分の演技を目一杯に演じている間中、興味なさそうに毛づくろいしたり、追いかけっこしてる猫がそこかしこにいるという、まさに猫の動きをしています。

 

舞台の上にいるのはまぎれもなく人間でしょう。
姿形もほとんど人間と言って差し支えません。
ですが舞台の上に猫の存在を感じるんですよね。
ということでもう少し長く演技が見られる動画をドン。
注意して見てほしいのは、こんなに舞台の近くから撮っているのに、高いジャンプのあと足音がしていないことです。

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構成はほぼ同じですが視点違いのものがこちら。

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軽やかな動きと尻尾に目を奪われっぱなしの私です。
なお推しは夜行列車のキャッツ、スキンブルシャンクスです。かわいいでしょ?
完全に余談ですがスキンブルシャンクスの乗る汽車が舞台上に現れた時、私は夢を見ているのかと思いました。あのシーンだけは他の部分を忘れたとしても、一生忘れない気がします。

 

こういった舞台上の動物表現はきぐるみ的なものもあれば演技として成立するものもあります。特に劇団四季はそのどちらも実行可能な実力派の劇団です。
もしお近くで公演があるなら、人生のスパイスとして一度見ておいても良いと思われます。


あ、なんか恥ずかしくて見られないっていう方は、自分は観客である、とちょっと意識して、今だけ没頭してみてください。
多分そういう風にしないと見られない方もいると思います。
私も昔そうだったので、このような楽しみを損なわないために。

 

ということで、『CATS』でした。