変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『ザムザ復活』手塚治虫の人体改造、そして人と獣の間のエロス

昨日は体調が悪くてとっとと寝てしまいました…

てことで、どうも、今回は『ザムザ復活』です。
こちらを含め、いくつかの作品群は『メタモルフォーゼ』というタイトルでまとめられています。

kc.kodansha.co.jp

私が所持しているのは講談社漫画文庫の手塚治虫短編集なので、
『夜よさよなら』とか別のお話も入っています。

収録作品は以下の通り。
『ザムザ復活』(人体改造による人→獣)
『べんけいと牛若』(成長に伴う子供→大人の男)
『大将軍森へ行く』(樹木の精霊→人間)
『すべていつわりの家』(悪魔→人間)
『ウォビット』(人→獣、兎→狼)
『聖なる広場の物語』(鳥→異形化)
『おけさのひょう六』(猫→人)
それぞれ雰囲気の違うTFが展開されます。
そのうち『ウォビット』と『聖なる広場の物語』については記述しようかと。
私が好きな話というだけなのですけれども。

 

『ザムザ復活』はタイトル通り、フランツ・カフカの『変身』から引用のある作品です。また『モロー博士の島』もイメージされている様子です。


主人公ザムザ青年は人間更生施設の所員です。そこでは更生の余地なしとされた囚人を絶滅しかけの動物に改造し(生殖についてはもしかしたら機能を失っているか、人間のままなのではと思っていますが…)脳を削って野生の空間に放すという刑が執行されています。
ザムザはその中で出会ったライオンに改造されているエレーナというフランス人女性に恋をします。しかしエレーナにパンとコーヒーの朝食を振舞っていることがバレた上、同僚がエレーナを虐待、殺害した折に銃殺してしまい、改造の中でもより重い刑の芋虫に変えられてしまいます。しかし…
というだいたいそんなお話です。勿論こんなところでは終わりませんが。

読み始め、冒頭から手塚ファンの方は「コイツらは人間だぞ」説明がありますが、その前に気づくであろうコマがあります。というのも、そのコマの動物は足の関節が人間風であり、顔のパーツもほとんど人のように描かれているからです。
狩りをするライオンの鼻の大きさやボディのバランス、オスのたてがみ、メスの乳房、狩られているインパラにある前髪、そして前述の足や腕の描写と、ああ、なるほどーと最初から納得させてくれること請け合いです。
各シーンに様々な動物に改造された人々の様子が描かれていますが、中でもインパラの後ろ姿や水牛の女性の背面からのイラストには絶対手塚先生が好きで描いたでしょ?っていう雰囲気があります。なんていうかお尻がエッチ。触りたい丸み。手塚先生はどちらかというとお尻星人だった気配があるので、おっぱいよりお尻を強調しているシーンは、
そしてエレーナのしなやかなボディラインは駆け回っているシーンで強く発揮されます。お乳とお尻のハーモニー。そして短い指の示唆や「あたまもどれない」という端的に示された最大の欠損への言葉には、ゾクリとせざるを得ません。
最終的にはザムザの恨みは昇華された形で終了しますが、最初から最後まで変身に事欠かない素晴らしい作品だと思っています。
シーケンスこそないものの、改造変身好きの方なら刺さる方も結構いるんじゃないでしょうか。

 

ザムザの要素はザムザに、その他の部分はモロー的に。モロー博士の島については私がちゃんと視聴してから(実のところDVDがレンタルにないので見られていないという…買えって話ですね)書きたいところですが、人を切り刻んで獣にするのと、獣を切り刻んで人にするのとで、確かに似ています。真逆のことをやっているのではありますが。

 

ということで、『ザムザ復活』でした。