変身譚録

人が何かに変身する作品について話してみる

『SEX PISTOLS』BLの中では知られた作品、TFでも広まって

タイトル通りの気持ちなのでどうぞ読んでください。
私はおそらくこれほど上質の世界観を有するTFものBLを読んだことがないです。
どうも、そんなわけで今回は『SEX PISTOLS』です。

まず紹介がてら特設サイトを。

www.b-boy.jp
そして現在書き下ろし連載中のpixivを。

comic.pixiv.net

読むのが面倒とか、ええ〜BLだろ興味ねえよって人もいると思うんで、
私の方からオススメポイントをゴリンゴリンに推させてもらいます。


(1)種によるキツい階級社会
まず前提として普通の人間は猿から進化しています。
が、この作品の中心となる斑類(まだらるい)は犬、猫、鰐、蛇、熊、人魚を主とした(他に蝙蝠、鳥、プレーリードッグや狸など犬猫のワクに当てはまらないものも)動物から進化した人類です。それぞれ呼称があるのですがここでは割愛します。わかりにくくなっちゃうからね。
ちょうど最初のリンクに掲載されているのですが、猫、鰐、蛇には軽種〜重種が存在し、犬、熊は中間種〜重種、人魚はレアリティ最高の最重種とされています。
ここでポイントなのが、軽種は子供がどんどん出来るのに対し、重種は子供が出来にくいというところです。中間種はその中間とはいえ、やはり子供は出来にくい。
さらに階級社会で上位にあたる重種の命令は下位の軽種にとっては逆らえません。
何故か、というと、そもそも軽種というのがイエネコやコビトワニやマムシなどの小さな種の動物を魂元に持っていて、重種のトラやジャガーやライオン、狼、ヒグマ、クロコダイル、パイソンなどには本能的に逆らうことが出来なくなったりするのです。どんなに頑張っても猫は猫、トラはトラ、ということのようです。社会的にもほぼ逆転不可能っていうジレンマ。現在単行本では狸(軽種かな?)の教師が重種の生徒に恋をする話もやっていますので、場合により、というのはあるのでしょう。

ということで
(2)魂元(動物の姿)が時々モロ出しになる
感情の高ぶりやガードが甘くなった時に魂元と呼ばれる動物の姿がモロ出しになります。モロじゃなくても耳や尻尾がヒュッて出たりします。試し読みの中にもあるかもしれないんですが、寝ている時にジャガーの姿になっていたり、興奮や恐怖が頂点に達している時に各種動物の姿が背後に描かれます。実際にその姿になっているらしく、セックス中に相手が全身魂元の姿になるとセックスが止まります。
こういう獣化が要点なのに獣化しないようにセーブしなきゃいけない、みたいな不自由さがたまらなく良いわけです。

(3)ゲイ婚が普通の社会
男女間の恋愛はもちろんですが、男同士、女同士でも子供が作れるような設定がなされています。具体的には直腸内に懐蟲という虫を潜らせることで擬似子宮を作ったり、いわゆるふたなり化する薬剤が存在したり、という点です。女性同士のカップルは描写だけなんですけれども。
そういう関係からも(BL漫画ということを差し引いても)出生率が高いオスがオス同士で結ばれることも多く、さらに出産もバッチリフォロー、子供が望まれまくるいい社会です。
ただし借り腹として女性がリース貸し出しされたり、種として男性が貸し出しされるということもかなりあるようで、いわばその家の党首以外はある程度物品的な扱いも受ける部分があるようです。無論重種ならば拒絶もできるようですが、そもそも軽種は重種からのブランド(他の斑類から対象者の魂元を隠す重種のスキル)をはじめとする精神攻撃に耐えたり、抗ったりできない。
など、結構婚姻がガバッてて面白いです。

という感じで、とにかく設定が面白いです。まだ話し足りない(笑)
ちょこちょこ出てきていた先祖返りなどは猿との混血になるので、非常に出産に到れる可能性が高い為、フェロモンを隠す術を学ばないと誰彼構わずセックスアプローチになってしまい、レイプが多発しかねないという状況にあったりします。
他にも人魚はスピリチュアルな存在なので本当に稀に肉体の獲得に成功している時に他の種族と交流して子供を設けたり、ほとんどの種は子供のうち魂元の姿で生活しているとか、人間と違う部分に対してどういう対処をしているか、みたいなアプローチがとにかく細かい。
いわゆるパロディ設定としてオメガバースより早くセクピス設定というのが流行っていたくらいには面白く、また興味深い世界観を構築されているのです。

ということで、『SEX PISTOLS』でした。
pixivでオイシイ設定の部分が読めるし、BLにしては絵がガチ系なので結構楽しめる…と思うんですよ。
あと後半にいくにつれてエッチなシーンが増えるお話でもあるので、個人的には全部読んで。って感じです。設定資料の大判本だけでも面白いですよ。